眼瞼下垂とは
眼瞼(がんけん)とはまぶたのことをさします。
眼瞼下垂とは、上まぶたが下がった状態です。
本来、上まぶたは黒目の中心(瞳孔中心)から3.5~5.5mm上の位置にあります。
この位置より上まぶたが下がってくると眼瞼下垂と判断されます。
片眼の場合と両眼の場合があります。
眼瞼下垂の症状
- 目が重い
- 目が開けにくい
- 視界が狭い
- 眠そうだと言われる、目つきが悪くなった
- おでこを使って目をあけている
- おでこにしわが寄る
- 顎をあげて物を見るようになった
- 二重の幅が広くなった
- 頭痛・肩こりがひどい
眼瞼下垂の原因
加齢性、コンタクト性、先天性、外傷性など様々な要因があります。
加齢性
加齢によりまぶたを挙げる筋肉が伸び、薄くなることで、筋肉の収縮がうまく伝わらず、まぶたが上がりにくくなります。60代以降に多く、腱膜性眼瞼下垂ともいわれます。
コンタクト性
ハードコンタクトレンズの長期装用者はまぶたを触れる機会が多いため、若くして眼瞼下垂が起こります。
使用期間が長いほど、近視度数が強いほど眼瞼下垂になりやすいとされています。
病態は加齢性眼瞼下垂と同じです。
先天性
出生直後からみられる眼瞼下垂です。
生まれながらにして眼瞼挙筋の働きが不良なことが原因です。
眼瞼下垂のある方の眼では、下方でしかものが見えないため、
それをカバーしようとして顎をあげた姿勢をとり、また眉毛をあげてものを見るようになります。
治療の基本は手術ですが、慌てて手術する必要はありません。
しかし、眼瞼下垂の程度が強いと視機能の発達に影響します。
定期的な診察を行い、手術の必要性や時期については判断する必要があります。
その他
外傷、重症筋無力症、神経麻痺によるものなどがあり、これらは他の眼の症状や全身症状を伴うことも多いです。
眼瞼下垂の手術について
まぶたの筋肉のゆるみが原因でおこるため、改善させるためには手術が必要です。
挙筋前転法
皮膚またはまぶたの裏(結膜)を切開し、まぶたを挙げる筋肉(挙筋腱膜)を周囲組織から剥がします。
その後、瞼板という硬い組織に縫い付けます。
皮膚切開法の場合、まつ毛の生え際から5mm程度の位置で皮膚を切開し、皮膚の余剰がある場合は切除します。
まぶたが分厚い場合、眼窩脂肪を切除することもあります。
重瞼(二重まぶた)を作製し皮膚を縫合します。
結膜切開法の場合、まぶたの裏から結膜と筋肉を切開し短縮します。
1週間程度ゴロゴロすることがあります。
皮膚のたるみがなく、軽度の眼瞼下垂に向いています。
挙筋群短縮術
皮膚を切開して、挙筋腱膜とミュラー筋を周囲組織から剥がします。
これらの筋肉を一塊にして瞼板に縫い付けます。
挙筋前転術より矯正量が大きいですが、
侵襲性が高く手術時間を要するため、挙筋機能が悪い場合や再発例に行います。
術式 | 両眼 挙筋前転術 |
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術前 | まぶたの位置が下がり、目つきが悪くみえます。 |
術後 | まぶたの位置が上がり、黒目がはっきりとでています。 |
術式 | 両眼 挙筋前転術+皮膚切除術 |
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術前 | まぶたが下がり、黒目が上1/2ほど隠れ、視界を狭めています。 二重幅も広がり眠たい印象を与えます。 |
術後 | 黒目の見える範囲が広がり、二重幅が狭くなりました。 |
術式 | 両眼 挙筋前転術+皮膚切除術 |
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術前 | 黒目が上1/3ほど隠れ、まぶたの皮膚のたるみもあります。 |
術後 | 黒目の見える範囲が広がり、皮膚のたるみも改善され、二重がはっきりと出るようになりました。 |
術式 | 両眼 挙筋前転術+皮膚切除術 |
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術前 | 黒目が上1/2ほど隠れ、また左右差もあります。 |
術後 | 黒目の見える範囲が広がり、左右差も改善しました。 |
前頭筋吊り上げ術
おでこの筋肉(前頭筋)と瞼板を吊り上げ材料で連結させ、おでこの力を利用してまぶたを開ける方法です。
先天性眼瞼下垂や重度の眼瞼下垂など、挙筋機能が悪く、挙筋群短縮術が無効であった場合に行います。
吊り上げ材料はナイロン糸や人工のシート(ゴアテックス®シート)を用います。
眉毛とまぶたの皮膚を切開するため、傷は2か所でき、術後は必ず重瞼(二重まぶた)の状態になります。
術式 | 左眼 前頭筋吊り上げ術(ゴアテックス使用) |
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術前 | 左眼の先天性眼瞼下垂、黒目が半分以上隠れ、眉毛の位置が上がっています。 |
術後 | 黒目の大きさの左右差がなくなり、眉毛の位置も下がりました。 |
術式 | 左眼 前頭筋吊り上げ術(ゴアテックス使用) 右眼 皮膚切除術(重瞼作成) |
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術前 | 左眼の黒目が半分以上隠れ、眉毛の位置が上がっています。 |
術後 | 黒目の大きさの左右差がなくなり、眉毛の位置も下がりました。 |
術式 | 両眼 前頭筋吊り上げ術(ゴアテックス使用) 両眼 下眼瞼内反症手術(切開法) |
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術前 | 両眼の先天性眼瞼下垂で、幼少期にナイロン糸による前頭筋吊り上げ術後の再発です。 黒目が半分以上隠れています。 下まぶたは逆さまつ毛もみられます。 |
術後 | 黒目が大きくなり、左右差もなくなりました。 下まぶたの逆さまつ毛も改善しています。 術後2週間のため、傷口の赤みは目立っています。 |
眼瞼下垂の手術費用
眼瞼下垂手術 (挙筋短縮術) |
両眼 | 3割負担 | 約55,000円 |
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1割負担 | 約17,000円 | ||
眼瞼下垂手術 (その他のもの) |
両眼 | 3割負担 | 約46,000円 |
1割負担 | 約15,000円 |
※手術費用は術式や使用薬剤、処方薬により多少変動いたします。
手術の副作用、リスク、注意事項
- できるだけ左右差を少なくするように手術を行いますが、完全に左右対称にはなりません。
術後に左右差が大きい場合には再縫合や再手術を行うことがあります。 - 再発することがあります。
- 術後に傷が離開したり、出血が起こった場合は再縫合が必要です。
- 術後感染などで眼窩蜂巣炎がおこることがあります。
- 術後6か月から1年で傷口は目立たなくなりますが、傷あとが目立ったり、ケロイドになることがあります。
- 手術中にまぶたの形を確認するために局所麻酔で行います。
- 手術の痛みを和らげるために、麻酔のクリームや点眼を使用し、鎮静剤や笑気麻酔を使用します。
- 手術中に鎮静剤を使用した場合、嘔気、嘔吐、頭痛、血圧低下、徐脈、呼吸不全が起こることがあります。