内反症(逆さまつ毛) trichiasis

内反症(逆さまつ毛)とは

まつげが何らかの原因で眼球に接触した状態をいいます。
まつげは本来、まぶたの縁から外側(眼球とは反対方向)へ向かって生えて、眼球にあたらないようになっています。
内反症は「睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)」「眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)」「睫毛乱生症」の3つの病態があります。

内反症

内反症(逆さまつ毛)の症状

  • 目がゴロゴロ、チクチクと痛い
  • 眼が赤い、充血している
  • まぶしい
  • 目やにや涙がよく出る

内反症(逆さまつ毛)の治療

症状がひどいケースでは手術が必要となります。
逆さまつげを切ったり抜いたりすると、今度は先がとがったまつげが生えてきて眼の表面を傷つけることがあるため、
自己抜去は注意が必要です。

睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)

睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)とは

乳幼児において、まぶたの向きが正常にも関わらず、まぶたの皮膚や皮下脂肪が過剰なことが原因で、
盛り上がった皮膚によってまつげが眼球の方向に押し込まれている状態です。

睫毛内反症

睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)の原因

多くは先天性(うまれつき)ですが、加齢や炎症、瘢痕などによる後天性もあります。

睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)の症状

  • よく目をこする
  • まぶしがる(カーテンを開けるのを嫌がる、日向で遊ぶことを嫌がる)
  • 困った顔をしている
  • 上目遣いでものを見る
睫毛内反症のお子様は、生まれつきの逆さまつ毛に慣れているため、
目に傷があっても自覚症状を訴えないことが多いです。
その代わり、まぶしがったり、困った顔や上目遣いで生活していることがあります。
学校検診で指摘され、眼科へ受診することがほとんどです。
頻度としては、下まぶたに多くみられますが、上下とも逆さまつ毛の場合もあります。

睫毛内反症(子供の逆さまつ毛)の治療法

2歳まではまつ毛が柔らかいため、逆さまつ毛があっても目を傷つけることはありません。
4~5歳になって顔が引き締まってくると治ることが多いため、あまり程度がひどくなければ経過をみます。
10歳以降は自然治癒が難しいとされているため、手術が必要です。

上眼瞼(上まぶた)の内反症手術

睫毛の上の皮膚を切開します。
余分な皮膚、筋肉を切除します。
睫毛が外側を向くように重瞼(二重)作成し、皮膚を縫合します。
軽度の場合には皮膚に穴を開けて糸を通すだけの手術(埋没法)を行う場合があります。

下眼瞼(下まぶた)の内反症手術

まつ毛の生え際を切開します。
睫毛の下の皮膚を切開し、余分な皮膚、筋肉を切除します。
睫毛が外側を向くように組織内部固定し、皮膚を縫合します。
軽度の場合には皮膚に穴を開けて糸を通すだけの手術(埋没法)を行う場合があります。
状態によって以上の手術を組み合わせて治療します。
2期的に手術が必要な場合もあります。

下眼瞼(下まぶた)の内反症手術

術式 両眼 上眼瞼皮膚切除術(重瞼作成)
両眼 下眼瞼内反症手術(切開法)
術前 上まぶたと下まぶたの逆さまつ毛を認めます。
術後 皮膚と筋肉の一部を切除し、まつ毛が外に向くように皮膚を縫合します。
術後1週間後は傷は目立ちますが、3ヶ月が経過すると目立たなくなります。
下眼瞼(下まぶた)の内反症手術

術式 両眼 上眼瞼皮膚切除術(重瞼作成)
両眼 下眼瞼内反症手術(切開法)
術前 上まぶたと下まぶたの逆さまつ毛を認めます。
術後 皮膚と筋肉の一部を切除し、まつ毛が外に向くように皮膚を縫合します。
まつ毛が外側に向いています。
下眼瞼(下まぶた)の内反症手術

術式 両眼 上眼瞼皮膚切除術(重瞼作成)
両眼 下眼瞼内反症手術(切開法)
術前 上まぶたと下まぶたの逆さまつ毛を認めます。
上瞼の皮膚のたるみにより黒目が小さくなっています。
術後 皮膚と筋肉の一部を切除し、まつ毛が外に向くように皮膚を縫合します。
まつ毛が外側に向いています。
上まぶたは皮膚のたるみを取るだけで、黒目が大きくなっています。

内眼角贅皮(蒙古ひだ)

目頭の皮膚のつっぱりのことを言います。
アジア人に多く、また睫毛内反に合併していることがあります。
内眼角贅皮により内反症の改善が妨げられ、再発の可能性が高い場合はこの治療も併用します。

内眼角贅皮(蒙古ひだ)の治療法

内眥ないし形成術(目頭切開)

まぶたの内側の皮膚をZ型やW型に切開し、縫合します。
逆さまつ毛の手術と組み合わせて治療します。
2期的に手術が必要な場合もあります。

内眥形成術の手術前後の写真

術式 両眼 上眼瞼皮膚切除術(重瞼作成)
両眼 内眥形成術
術前 上まぶたの逆さまつ毛と内眼角贅皮(蒙古ひだ)を認めます。
術後 皮膚と筋肉の一部を切除し、まつ毛が外に向くように重瞼を作ります。
内眥形成術(目頭切開)により目頭のつっぱりが軽減し、まつ毛全体が外をむくようになります。
内眥形成術の手術前後の写真

術式 両眼 上眼瞼皮膚切除術(重瞼作成)
両眼 内眥形成術
術前 上まぶたの逆さまつ毛と内眼角贅皮(蒙古ひだ)を認めます。
術後 皮膚を切除し、まつ毛が外に向くように重瞼を作ります。
内眥形成術により目頭のつっぱりが改善しています。

眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)

眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)とは

まぶた全体が内側(眼球の方向)を向いている状態です。

まつ毛の向きは問題ありませんが、まぶたの向きが悪いためにおこります。

眼瞼内反症

眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)の原因

加齢によって、下まぶたを支えている組織やまぶたを閉じる筋肉がゆるむことが原因とされています。

眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)の症状

  • 目がちくちくして痛い
  • 目がゴロゴロする、異物感がある
  • 目やにや涙がよく出る
  • 目が充血している

眼瞼内反症(大人の逆さまつ毛)の治療法

埋没法(縫合法)

睫毛の下の皮膚を小さく切開します。
皮膚側と白目(結膜)側から糸を通し、下まぶたが外側を向くように縫合します。

手術時間は10分程度で、ご希望あれば、来院日当日に手術可能です。
手術の有効率は90%です。
10%の方は再発を認めます。

埋没法(縫合法)
眼瞼内反症(縫合法)の術前術後写真

術式 眼瞼内反症(縫合法)
術前 下まぶたのたるみにより、まつ毛の一部が眼球に当たっています。
術後 縫合法(埋没法)により、まぶたの向きを変えるだけで、まつ毛の向きがそろっています。
外眥がいし短縮術(目尻切開)・外眥がいし吊り上げ術

まぶたのたるみが強く、縫合法だけでは内反症の改善が難しい場合や再発例に、縫合法と併用して行います。

目じりの皮膚の一部を切開し瞼板(まぶたの硬い組織)を露出させます。
瞼板を骨膜に縫合固定します。
下眼瞼を外側に引っ張ることで、まぶたのたるみを改善させることができます。

眼瞼内反症(縫合法)+外眥吊り上げ術

術式 眼瞼内反症(縫合法)+外眥吊り上げ術
術前 下まぶたがたるみ、まぶた全体が内側に反転しています。
術後 まぶたの反転が無くなり、たるみも改善し、まつ毛が外側へ向いています。

睫毛乱生症・睫毛重生症

睫毛乱生症・睫毛重生症とは

まぶたの向きには異常がなく、正常なまつ毛の中で何本かが眼球に向かって生えている状態です。
まつ毛の毛根周囲の炎症や傷などが原因で、まつ毛が生える方向が不規則になってしまいます。

睫毛乱生症

睫毛乱生症・睫毛重生症の治療

毛根切除術

異常な睫毛を毛根ごと切り株のように切除します。
広範囲の場合はまぶたの組織(皮膚や筋肉など)とともに毛根を切除し、切除した皮膚を固い組織(瞼板)に縫合します。

毛根切除術(部分切除)の術前術後写真

術式 毛根切除術(部分切除)
術前 まつ毛1本が眼球に向かって生えています。
術後 まつ毛1本を毛根ごと切除し、生えてこないようにします。
毛根切除術の術前術後写真

術式 毛根切除術
術前 まぶたの向きには異常がなく、正常なまつ毛の中で何本かが眼球に向かって生えています。
術後 下まぶたのまつ毛全体を毛根ごと切除しています。
まつ毛が無くなっても目の印象は大きく変わりません。

内反症(逆さまつ毛)の手術費用

※税込表示
眼瞼内反症手術 両眼 3割負担 約22,000円
1割負担 約7,000円
内眥ないし形成術 両眼 3割負担 約120,000円
または高額医療費適応

手術の副作用、リスク、注意事項

  • できるだけ左右差を少なくするように手術を行いますが、完全に左右対称にはなりません。
    術後に左右差が大きい場合には再縫合や再手術を行うことがあります。
  • 術後に再発をすることがあります。その際は再度手術が必要です。
  • 術後に傷が離開したり、出血が起こった場合は再縫合が必要です。
  • 術後感染などで眼窩蜂巣炎がおこることがあります。
  • 術後6か月から1年で傷口は目立たなくなりますが、傷あとが目立ったり、ケロイドになることがあります。
  • 手術中にまぶたの形を確認するために局所麻酔で行います。
  • 手術の痛みを和らげるために、麻酔のクリームや点眼を使用し、鎮静剤や笑気麻酔を使用します。
  • 手術中に鎮静剤を使用した場合、嘔気、嘔吐、頭痛、血圧低下、徐脈、呼吸不全が起こることがあります。

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